【動画】研究論文で注意すべき「動詞時制」

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こんにちは!英文校正ワードバイスです。

英語論文での正しい時制使用

文章を書くときは、その言語の標準的な文法を遵守し、求められるスタイル・フォーマットに必ず従わなくてはなりません。これは英語に限らずどの言語で書く文章にも、またどんな形式のライティングにも同様に言えることです。伝えたい内容を誰に対しても正確に伝達するスキルはコミュニケーション能力の核心ですが、特に一つの研究や発見が世界の多くの人々に影響を与えうる研究論文のライティングでは、科学的事実や見解をいかに正確かつ論理的に読者に伝えられるかということが、他のどんな文章よりも重要視されます。ゆえに、研究者には高度なライティング能力が不可欠なのです。

「意図した内容を読者に正確に伝達するためのライティング」という点から英語論文執筆を考えるとき、重要な役割を演じているのが動詞時制です。時制は単純な時間の経過を示すだけに留まらず、文章に様々なニュアンスが付加する機能を持っているからです。

研究論文は時間的にすでに完了した研究や実験、発見について記述するものであるため、「単純にすべて過去形にしてしまえばいいのでは?」と考えてしまう研究者が少なくありません。しかしこれは高度なアカデミックライティングという点から見たときに、全く正しい態度ではありません。論文著者としては常に対象に一定の距離を保った客観的な記述が求められますが、これは動詞時制にも反映されます。

時制の使用は、表したい内容や時にフォーマットによっても規定されますが、ここではアカデミックライティング全般に言える時制使用のルールに従って総合的に解説していきます。


英語論文での現在・過去・現在完了時制の使い分け

まず、研究論文で一般的に用いられる時制は、現在 (単純現在)、過去現在完了の3つのうちどれかであることを覚えておきましょう。これからセクション別に一般的に用いられる動詞時制を解説してきますが、その前にこの3つの時制が論文においてどのような場面で主に使用されるのか整理してみましょう。

PRESENT TENSE(現在形)

現在形は一般的な事実、現時点における解釈や意味、そして将来における応用について述べる際に用いられます。

General facts (一般的事実)は(少なくとも飛躍的な科学的進歩がない限りは)普遍的で経時的変化のない科学的事実のことです。

Example: “Insulin and glucagon regulates blood glucose levels.” 

Implications(含意)は基本的に一般的事実と同様に考えましょう。

Example: “An elevated glucose level indicates a lack of glucagon hormones in the pancreas.”

Further research(後続研究) はその重要性を強調するために現在時制が使用されます。

Example: “Further studies about glucagon receptors are needed.” (passive voice)

SIMPLE PAST TENSE(単純過去)

単純過去は過去に既に完了している出来事について述べる際に使用されます。特に研究や実験、観察された現象など単発的な事象に対して使用される時制です。

Example: “Scientists in Wales discovered a new enzyme in the liver.”

Example: “Protocol X was used to analyze the data.” (passive voice)

PRESENT PERFECT TENSE(現在完了)

現在完了は、過去の不特定の時期に起きた出来事や、過去の不特定な時期に始めて現在まで完了していないこともしくはつい最近に完了したことについて述べる際に用いる時制です。完了形は例えばIntroductionセクションで研究の背景情報を説明することで、研究の動機や目的を表すのに用いられます。

ここで示しているのは一つの例で、前述したような場合必ず現在完了を使用しなければならないというわけではありません。単純過去形でより明確に述べることもできます。

Example: “Many studies have focused on glucagon as an important regulating hormone.”

Example: “Until recently, researchers have analyzed this kind of data using a Chi-Square Statistic.”

Example: “Efforts have been made to understand more about this process.” (passive)


論文のセクション別に適した時制

英語論文のセクション毎に基本的に使用される時制の例を、以下で紹介していきます。ただし時制に関してもジャーナルの好みや論文が従うスタイルが反映されている必要があるため、「このセクションでは絶対に現在時制を使用してはいけない」などと堅苦しく解釈する必要はありません。文脈や強調したい内容、論文が従うスタイルやジャーナルガイドを考慮したライティングを行いましょう。

こちらも参照:英語論文のセクション別時制整理

Abstract

アブストラクトでは基本的に単純過去時制が使用されますが、直近の研究などに言及しながら現在の研究分野での発展の動向を導入文として使用する際には単純現在や現在完了時制を使用します。

Example of introductory sentence (present perfect): “Recent studies of glucagon and insulin production have led to breakthroughs in medicine.”

Example of establishing background/circumstances/purpose (present): “Diabetes  accounts for a higher number of deaths in the US than previously calculated.”

事実を述べたり、研究そのものや分析、発見などを述べるときには現在時制を使用します。

Example of a statement of fact: “In the US, diabetes is the most common endocrine disease.”

過去の決まった時点や場所での事実や発見について述べるときは、単純過去形を使用します。

Example: “In 2016, diabetes was the most common endocrine disease.”

Introduction

イントロダクションでは現在形と過去形どちらも使用されます。

現在形は基本的に常に事実(true)であることについて述べるときに使うのに対し、単純過去形は過去のあなたもしくは他の研究者による功績について述べるときに使います。

Example of earlier research efforts (simple past): “This same research team discovered a similar enzyme in their 2012 study.”

先行研究の時期が不明である場合やあまり重要でない場合、現在完了を使用します。

Example of : “Prior research has indicated a correlation between X and Y.”

イントロダクションのまとめ部分では単純過去または現在完了を使用します。

Example of concluding statement (simple past): “The CalTech glucagon studies wereinconclusive.”

Example of concluding statement (present perfect): “Prior research in this area has beeninconclusive.”

過去に起こったことや発見されたことで、その後改訂されていることには過去完了を使用します。

Example of revised information (past perfect): “The Dublonsky study had determined that X was Y, but a 2012 study found this to be incorrect.”

Literature Review

文献レビューのセクションに使用される時制は、APAやMLAなどの論文フォーマットやその文献を論じる方向性によっても影響を受けます。

単純過去は基本的に扱う文献著者の名前を主語として、その研究について論じる際に使用されます。

Example of describing researcher’s actions: “Pearson (1997) discovered a new enzyme using similar methods.”

文献検討セクションで過去形で用いられやすい動詞には以下のようなものがあります。: investigated, compared, studied, analyzed, investigated, found, confirmed, performed, etc.

他の研究者の研究に意見を述べたり、結果や考察、結論について言及する際には現在時制を使用します。

Example of discussing another’s work: “Ryuku (2005) concludes that there are no additional enzymes present in the liver, a finding this current study directly refutes.”

この場合用いられやすい動詞には次のようなものがあります。: stresses, advocates, remarks, argues, claims, posits. etc.

Methods

研究方法では現在形と過去形の使用についてはっきりと線引きがなされています。

過去時制はあなたが行ったことについて述べる際に使用します。(行動の主体よりも行動の対象に焦点を当てて記述する方法である受動態は、過去数十年間研究論文で推奨されてきましたが、ただ無条件に受動態を使用しなければならないと考えるのではなく、文意を的確に伝達することに重点を置いて能動態と受動態を使い分けるのが重要です。詳しくはこちらの記事をご覧ください:セル(Cell)誌が指摘する英語論文での能動態・受動態の使用)

Example of methods of study: “A glucose molecule was added to the mixture to see how the peptide would respond.” (passive voice)

Example of methods of analysis: “The results were analyzed using Bayesian inference.”(passive voice)

図表やグラフに言及したり説明する時には現在形を使用します。

Example: “Table 5 shows the results of this first isolated test.”

Example: “The results of this first isolated test are displayed in Table 5.” (passive voice)

Results

結果セクションでの時制使用は、研究方法でのそれと似ています。

実際に得られた結果について述べるときは過去形を使用します。

Example: “The addition of 0.02μg of glycogen activated receptor cells.”

Example: “Receptor cells were activated by the addition of 0.02μg of glycogen.” (passive voice)

図表やグラフについて言及するときは現在形を使用します。この場合も能動態・受動態どちらも使用できます。

Discussion

考察セクションは研究結果の分析と、それらが示唆する意味について解説するセクションです。

あなたが発見したことについて述べるときには単純過去を使用します。

Example of summarizing own findings: “The experiment yielded a number of results associated with the processing of glucose.”

あなたの発見事項の重要性について強調するときは、現在形を使用します。

Example: “[This study confirms that] synthetic glucagon is two-thirds as effective at decreasing fatty acid synthesis.”

Conclusions and Further Work

結論と後続研究の可能性についての言及は、論文を締めくくる最後の数文となります。

現在完了を使用することで、あなたの主張が論文発表の時点で事実であることを示すことができます。

Example: “Results from this study have led to a deeper understanding about how different peptides interact in this enzyme.”

研究結果の意義や応用を述べながら今後の研究を示唆する文章では現在時制が有効です。

Example of wider implications: “This study confirms that endogenous glucagon is even more essential in metabolism than previously thought.”

今後後続して必要な研究や行われてほしい研究について述べるときには受動態の現在形のほかにも、未来形や現在形、仮定法が使えます。

Example of call for future research: “Further clinical studies are needed/will be needed/must be carried out/should be carried out to isolate the cause of this reaction.”

時制の意味と用法を正しく理解して、伝えたい内容に合わせて使いこなせると論文が何倍も読みやすくなります。論文での時制の使われ方を理解するには、論文をなるべく多く読み、そして書いてみることが重要です。

参考資料

  1.  Hartley, James. Academic writing and publishing: a practical guide. New York: Routledge, 2010. Print.
  2. Penn State College of Earth and Mineral Sciences Blog: “Descriptive Abstracts.” https://www.e-education.psu.edu/styleforstudents/c6_p8.html
  3. Academic Conferences and Publishing International: “Abstract Guidelines for Conference Papers.” https://www.academic-conferences.org/policies/abstract-guidelines-for-papers/
  4. UNC College of Arts and Sciences Writing Center Blog: https://writingcenter.unc.edu/tips-and-tools/abstracts/
  5. Wordvice JP: 効果的な英語論文タイトルの付け方 – 最新トレンド分析
  6. Wordvice YouTube Channel: How to Create a Title for Your Research Paper.”
  7. Management and Economics in Construction Blog: https://cmeforum.wordpress.com/2012/01/04/how-to-write-informative-abstracts/ 
  8. Wordvice JP: 適切な論文キーワード(keywords)の選び方
  9. Wordvice YouTube Channel: “Parts of a Research Paper.” https://www.youtube.com/watch?v=aO6ipI-d2fw
  10. ScienceDocs Inc. Blog: “5 Common Mistakes to Avoid When Writing a Discussion.” https://www.sciencedocs.com/writing-a-research-paper-discussion/ 

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