学術論文での一人称(I, we)使用ルール

文法と語彙

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こんにちは!英文校正ワードバイスです。

英語論文を書く皆さまは、論文内での一人称の使用について一度は悩んだことがあるのではないでしょうか?実際に、かつてはアカデミックライティングでの“I”や“we”の使用はふさわしくないと思われてきました。しかし、これはもう古いしきたりです。実は、三人称と受動態の構文 (いわゆる”つまらない”ライティング) が受け入れられるようになった1920年代までは、学術コミュニティでも一人称を使用しており、最近になって、また昔に立ち返って能動的で魅力的な文章が求められるようになっています。

ただし、“I”や“we”の使用にはいくつか注意点があります。例えば、一人称は論文のアブストラクトやイントロダクション、結論、ディスカッション部分で使用されることが多い反面、研究方法や研究結果のセクションでは一般的に三人称や受動態が使用されます。

本日の記事では、人称代名詞の使用を避けた方がいい場合・人称代名詞を効果的に使用できる場合に分けて紹介していきます。

一人称を使用してもいい場合

  • 受動態を減らして文を読みやすくしたいとき
  • 権威や信憑性を強調したいとき
  • 主題に対する関心を表すとき(簡単なレポートでよく見られる)
  • 特に事例研究や仮定的状況において、読者との個人的なつながりを作るとき(特に、ある概念が個人に与える影響を調べる哲学・宗教などの分野、芸術分野では他分野より更に個人的な側面が強調される)
  • 文献や先行研究について述べながら、あなたの視点を強調するとき
  • 会話調のトーンを作り出したいとき(アカデミックライティングでは稀)

一人称を避けたほうがいい場合

  • 一人称を使用することで客観性が失われ、観察や考察に関して個人の主観的なニュアンスが加わってしまうと思われる場合
  • できる限りバイアスをなくし、客観性をアピールしたいとき
  • 一般的なあなたの考えを表現するとき(“I think”のような個人的な考えを示すフレーズは論文に不適切)

一人称・三人称使用例

一人称を使用するのとしないのでは、どのような効果が表れるのか見てみましょう。

Example 1 (一人称の使用が望ましいケース):

To understand the effects of global warming on coastal regions, changes in sea levels, storm surge occurrences and precipitation amounts were examined.

[Note: 長いフレーズが受動態の主語になると文章が解釈しにくくなる。更に、論文執筆者(個人またはグループ)が直接実験した場合は、そのことが分かるように書いた方が論じやすい。]

We examined changes in sea levels, storm surge occurrences, and precipitation amounts to understand how global warming impacts coastal regions.

[Note: 研究の目的を説明するときに"we"の代わりに"this study"や"this paper"で置き換える研究者が多いが、この場合"We"の使用は適切。実際に最近Natureに掲載された論文も、"we"を使用して能動態で述べている。受動態にする場合は、"this study"や"this paper"が本当に続く動詞の示す行動の主体となっているか確かめる。例えば、"we attempt to demonstrate ~(works)" は正しいが、"the study attempts to demonstrate"とした場合"the study"は人間ではないため誤り。]

Example 2 (一人称の使用が望ましくないケース):

From the various data points we have received, we observed that higher frequencies of runoffs from heavy rainfall have occurred in coastal regions where temperatures have increased by at least 0.9°C.

[Note: 研究結果の部分で人称を使用すると、実験の再現性に対する疑問を生む可能性がある。ただし、数学分野の場合は"in X example, we see..."などのフレーズが良く使用される。]

Coastal regions with temperature increases averaging more than 0.9°C experienced higher frequencies of runoffs from heavy rainfall.

[Note: 受動態を使用せずに、メインとなる動詞の主語とその受け手の因果関係を明確に示していて分かりやすい。一人称を使用しないことで、結果が誰の視点を通したものでもない客観的事実であることを示せる。]

Example 3 (一人称の使用が望ましいケース):

In contrast to the study by Jones et al. (2001), which suggests that milk consumption is safe for adults, the Miller study (2005) revealed the potential hazards of ingesting milk. The authors confirm this latter finding.

[Note: "Authors"が(1) Jones et al.、(2)Miller、(3)この論文の著者のうち、誰を指しているのかこれでは不明確。]

In contrast to the study by Jones et al. (2001), which suggests that milk consumption is safe for adults, the Miller study (2005) revealed the potential hazards of ingesting milk. We confirm this latter finding.

[Note: "we"を使用することで主語が明確になり、今まさに書いている論文の研究で発見したことの重要性をより強調できる。このように、科学ライティングにおいて"I"や"we"の一人称は、他の研究を紹介して自分の研究と比較しながら述べる際に主に使用されており、APAなどがこのような一人称の使用を奨励している。ただし、社会科学分野ではこれに限らず個人の視点からの議論であることを示すために一人称を使用する場合もある。]

一人称の使用に関するその他のポイント

  1. 文頭に人称代名詞を使用するのは避ける。文頭の単語は最も読者の注意を引くため、最初の1、2語に人称が使用されていると執筆者の意図とは無関係に人称に読者の注目が集まってしまう。
  2. “we”の定義に気を付ける。学術ライティングにおいて、”we”に読者を含めてはいけない。読者は論文内で述べられているデータの収集や分析、結論の考察に加わったわけではなく、むしろ執筆者によって論文の結論に自然に同意できるよう説得を受ける側の立場である。また、”we”が示す範囲が非常に広い場合は、はっきりとその定義を述べる。例: “As researchers, we frequently question…”
  3. 現代の英語の使用基準でアカデミックライティングでの一人称の使用は以前より受け入れられるようになったが、二人称“you”はアカデミックライティングで使用するにはカジュアルすぎると判断されているので、使用しないこと。
  4. 何よりもまずジャーナルのガイドを確認すること。人称の使用をジャーナルレベルで制限している場合もあるため。
  5. 提出前に必ずターゲットジャーナルの最新の掲載論文を確認し、ジャーナルの慣例や好まれる文体について把握しておくと良い。

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