2023年10月23日

効果的な英語論文タイトルの付け方 – 最新トレンド分析

Wordvice

こんにちは!英文校正ワードバイスです。

論文を検索しているとき、私たちは何を決め手に本文を読むかどうかの判断をしているのでしょうか。あるいはネットニュースを流し読みしているとき、ふと視線が向かうのは一体どのような要素でしょうか。

人は目に入りやすいイメージから先に認識すると言われています。これを論文について言うならば、読者の視線が最初に向かう先は論文タイトルと論文内に挿入された図表ということになります。

以前の記事で、図表の題目と凡例を作成する上でのコツをご紹介しましたが、今回はタイトルを吟味する番です。ジャーナル受理率向上のために重要な役割をする論文タイトルを効果的に設定するためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。以下の順序で説明していきます。

  1. ジャーナル掲載論文タイトルの特徴分析
  2. タイトルに含まれるべき情報
  3. タイトルの長さ
  4. キャッチーなタイトルは本当に有効なのか

内容を簡潔に図にまとめてみました。クリックすると、各箇所が拡大されます。

効果的な英語論文タイトルの付け方

適切な表題を設定するには、ジャーナルのガイドラインを精読するのはもちろんのこと、過去数年間ターゲットジャーナルに掲載された論文のタイトルを分析し、傾向を探りましょう。エディターの好みを知ることが重要です。

ジャーナル掲載に有利なタイトルとは

まずは、実際に過去の論文でどのようなタイトルが使用されているのか整理してみる必要があります。James Hartleyが論文タイトルを特徴別に13のカテゴリに分類した例がありますが、今回はそこに当社独自に分析したNature, Elsevier, Springer等の大手ジャーナル論文タイトルデータを加え、5つのカテゴリに再分類してみました。また、最新の論文タイトルのトレンドを分析した論文を参照し、そこから分かった内容も今回の記事で紹介していきます。

下の表には、各表題タイプの主な特徴 (使用されている文型や内容)、そのタイプのタイトルが主に使用されている論文の形式と、実際のサンプルを加えてあります。タイトル例がないタイプについては、そのカテゴリでそのタイトル形式が使用される例が少ないことを意味しています。

ジャーナルによって投稿・掲載できる論文のタイプは様々ですが、ここでは論文のタイプを以下の4つに大きく分類した上で説明しています。

  • Rapid responses and short communication: 研究論文本体(オンライン公開論文)を修正したり最新の研究結果、方法論、ソフトウェアや質問への返答を加えるための文章。
  • Research papers: 科学的な方法を使用して収集したデータの分析に基づく結果や発見事項を記述した論文。
  • Reviews: 新しいデータによる研究に基づく論文ではなく、一つのテーマに関する最新の発見や研究結果を要約した論文。
  • Clinical cases: 臨床研究に焦点を合わせた論文。

ここからはタイトルのタイプに分けてその特徴を具体的に見ていきましょう。

1. 一般的なタイトル

主な特徴:

  • 主に名詞で構成され、研究テーマを簡潔に表すフレーズを使用。
  • アブストラクトで表記されているキーワードを活用し、単語数も平均的であるため検索されやすい。
  • 分類的な(taxonomic)用語は最近では避けられる傾向。
  • レビュー型論文、研究論文(症例報告を含む)、返答型論文で一般的に使用される形。
論文タイプ
Research papers
Clinical cases
Rapid responses and short communication
Reviews

2. 主題+主題を補足する副題で成り立ったタイトル

主な特徴:

  • 主に名詞で構成され、後ろにコンマやその他記号により補足説明が追加されたタイトル。臨床事例、研究論文やレビュー論文で最も一般的に使用されている形式。
  • Butar や van Raanの最新の研究によると、多くの分野で最も一般的に使用されているタイトル形式という。実際この形式があまりに広く使用されているため、それ以外の形式をとる場合は引用で不利なことがある。この形式が好まれない分野では特に関係がない。
  • 引用数の多い医学論文の70%はコロンを使用
  • Plos掲載の論文タイトルでこの形式を使用している場合、ダウンロード・引用数が低い傾向。
  • 研究で使用している変数や実験対象に具体的に言及し、包括的なタイトルにする傾向。
論文タイプ
Research papers
Clinical cases
Rapid responses and short communication
Reviews

3. 研究結果を示すタイトル

主な特徴:

  • 研究から得られた主な結果や研究の重要性を強調する完全文となる傾向。
  • 一部ジャーナル(例: 医学書籍の一部など)は叙述型のタイトルを禁止していたり、好まない場合あり。
  • 平叙文をタイトルにする際は、読者をだますことがないよう細心の注意が必要。研究結果を誇張せず、純粋に研究から得られた結論だけを記述し、動詞の選択に注意する。例えば、当社が“How to Guarantee Your Paper’s Publication”などという無責任なタイトルでブログを書くことはできない。
  • このタイプでは一般的に包括的な主題を設定し、コロン後に研究結果と主題を詳細に示すパターンが多く使用される。また、稀に疑問形を使用することで論文内で得た結果を暗示することもある。
論文タイプ
Research papers
Clinical cases
Rapid responses and short communication

4. 研究方法を併記したタイトル

主な特徴:

  • 主題+コロン+方法論の形式が最も良く使用されている。(その逆順もあり)
  • このタイプではコロンの代わりに前置詞を使用して方法論を追加することも可能。
  • 受け身動詞(passive verb)を”by,” “via,” “through” “with”のような前置詞と共に使用して実験方法を示すのも一般的。
論文タイプ
Research papers
Clinical cases
Rapid responses and short communication
Reviews

5. 言葉遊びやウィットをきかせたタイトル

主な特徴:

  • 一般的に言葉遊びは特定の文化圏内で共有される知識を前提とすることが多く、タイトルに使用するのは適さない。それでも社会学ではよく使用される傾向。
  • 社説などのより大衆的なコンテンツではタイトルへの疑問文の使用や言葉遊びを好む傾向。
  • 臨床研究、研究論文でこのようなタイトルはほぼ見られない。レビュー論文や簡単なコミュニケーション文書で主に使用される。
論文タイプ
Reviews
Rapid responses and short communication
効果的な英語論文タイトルの付け方

論文タイトルに含まれるべき情報

学術コミュニティのデジタル移行が進む現在、論文タイトルやアブストラクトも検索エンジンを利用して検索されることを想定した上で、「検索エンジン最適化」が行われている必要があります。SEOを図るためには、タイトルに情報を詰め込みすぎても、逆に内容が乏しすぎてもいけません。

タイトルをあまりに広く一般的なものにすれば読者のニーズとの不一致が発生し、あまりにも特殊なものにすれば広い読者層を抱えるジャーナルからは扱いにくい論文と見られてしまいます。基本的にジャーナルエディターの目的はより多くの読者を獲得することでジャーナルの影響力を強化していくことにあります。よって、専門的すぎず一般的すぎない絶妙なポイントを探らねばなりません。

更に考慮すべきは査読というプロセスです。タイトルが非常に狭い特定分野を思わせる場合、ジャーナルはまず査読者の任命に苦労することとなります。ジャーナルエディターも人間であり、何百もの論文を審査する中では査読者探しの手間だけでも十分にリジェクトの原因になり得ます。当社ブログで強調していますが、論文受理のためには内容の質はもちろん、カバーレターやタイトルの設定といったテクニック面での工夫も不可欠です。

最も効果的なタイトルの長さ

論文タイトルに関する基本原則はありませんが、分野によって好まれる傾向はあります。一般的に奨励されている論文タイトルの長さは10-20ワードです。上限は30-35単語と言われていますが、長すぎるタイトルは特別な理由がない限りあまり良い評価にはつながりません。

分野別に見てみると、数学分野の論文タイトルは短く(~8単語)、医学分野の論文タイトルは長い傾向があります。最近の研究では、論文タイトルの長さはエディターレビューの段階で審査に影響を与える可能性があっても、論文の影響力自体とはあまり関係がないと言われています。しかし、別な論文では生物学・心理学・社会科学分野でタイトルの長さと論文の影響力との間に負の相関関係があると結論付けているため、不必要に長いタイトルがプラスに働くことはないと考えた方が良いでしょう。論文タイトルが長い場合はそれだけで直観的に論文内容を把握することが難しくなることを考えれば、当然のことかもしれません。タイトルさえ難解な論文の本文を読み進めようとする読者は多くないはずです。

そのような点を考慮すると、名詞を詰め込みすぎたタイトルはおすすめしません。最近Natureに掲載された論文のタイトルに“A chromosome conformation capture ordered sequence of the barley genome”というものがありますが、このタイトル程度の長さと構成でも、長く複雑な印象を与えますので注意しましょう。また、ジャーナル側では掲載論文のうち最も引用数の多いものを規範として、そこで使用されているタイトルのフォーマットを基本ガイドラインとして設定する傾向があります。まずはジャーナルのガイドラインをしっかりと確認することが必要だということです。

言葉遊びやウィットをきかせたタイトルは有効なのか

新聞や雑誌で一般的に使用される記事のタイトルとは違い、学術アーティクルのタイトルにはより形式的なものが好まれます。これはそれぞれの読者の目的が異なることを考えれば当然です。研究者は大衆的な興味関心を追求する目的よりも、自分の専門分野と合致した情報を探し、参考にするために論文を検索します。よって、学術論文のタイトルに第一に求められることは、論文内容とその特徴をできるだけ正確に、取りこぼしなく表していることと言えます。

近年出版された論文の表題を調査した研究者たちは、学術論文でも言葉遊びやウィットをきかせたタイトルが徐々に増えてきているという事実を発見しました。このような流れは情報が選択的に消費されるデジタル化の波の中で自身の論文を少しでも差別化するための戦略として生まれたものとも言えます。確かに、このようなタイトルは読者の人間的な興味関心を引き付けるのには有効です。Cellのようなトップジャーナルでも、レビュー論文のような場合は言葉遊びを使用したタイトルが散見されます。一度アクセプトされてしまえば、誰もタイトルに文句はつけられないというのも事実です。

しかし学術界ではいまだ人の興味をそそることだけを狙ったような、砕けたタイトルには保守的です。また、タイトルで言葉遊びを使用している論文は“ダウンロード数は多くても引用数は少ない”と言われています。学術論文の目的とターゲット読者層を考えたときにそのようなタイトルが本当に適切か、冷静な判断が求められているということです。

まとめ: 効果的な論文タイトルを設定するために

論文タイトルを決めるときには以下のポイントを思い出してみましょう。

  • 完全文(full sentence)
    • 完全文は冗長になる傾向があるため、タイトルへの使用はなるべく避ける。重要なキーワードと動詞を使用し、動詞が本当に適切か、誇張していないか確認すること。データが確定していない場合は“could”や “may”のような法助動詞を加えるのが適切。
    • 社会科学系の論文で完全文のタイトルはほぼ使用されない。
    • 生命科学系では完全文のタイトルもある。
    • レビュー論文のタイトルに完全文はあまり使用されない。多くが名詞や重文(compound)のタイトルを使用。
  • 疑問形タイトル
    • 疑問形のタイトルも増加傾向にあるが、全体ではまだ10%未満に過ぎない。疑問形は生命科学よりも社会学系で多く使用される傾向。
  • サブタイトル付き
    • 最も一般的なタイトル形式。“メインテーマ+補足説明” や “メインテーマ+ 方法”のどちらかになる。
    • 社会科学系は重文(compound)を好む傾向。

参考資料

  1. Hartley, James. Academic writing and publishing: a practical guide. New York: Routledge, 2010. Print.
  2. Fox, Charles W., and C. Sean Burns. “The relationship between manuscript title structure and success: editorial decisions and citation performance for an ecological journal.” Ecology and Evolution10 (2015): 1970-980. Web.
  3. Milojević, Staša. “The Length and Semantic Structure of Article Titles—Evolving Disciplinary Practices and Correlations with Impact.” Frontiers in Research Metrics and Analytics2 (2017): n. pag. Web.
  4. Hartley, J. “New ways of making academic articles easier to read.” International Journal of Clinical and Health Psychology1 (2012): 143-160.
  5. Hays, Judith C. “Eight Recommendations for Writing Titles of Scientific Manuscripts.” Public Health Nursing2 (2010): 101-03. Web.
  6. Jamali, Hamid R., and Mahsa Nikzad. “Article title type and its relation with the number of downloads and citations.” Scientometrics2 (2011): 653-61. Web.
  7. Nature Blog: https://blogs.nature.com/naturejobs/2016/12/16/making-headlines-choosing-the-best-title-for-your-paper/.
  8. Journal of European Psychology Student blog: https://blog.efpsa.org/2012/09/01/how-to-write-a-good-title-for-journal-articles/.

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