2023年03月01日

学術論文のオーサーシップに関して注意すべき3点

Wordvice

こんにちは!英文校正ワードバイスです。
前回の記事では、International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE)のガイドラインに沿って“オーサーシップ(authorship)”を定義し、なぜ論文のオーサーシップが重要な問題なのかについて説明しました。

一方、Committee on Publication Ethics (COPE)はオーサーシップについてより広く定義しています。COPEは“オーサーシップについて普遍的な定義はないが、少なくとも著者は研究の特定部分に対して責任を持たなければならない”と述べています。ICMJEの4つの基準に基づく定義とCOPEによる定義のどちらに従うかという問題は別として、まず、オーサーシップはどのように決定しなければならないのでしょうか?多くのジャーナルではGuide for Authorsにてオーサーシップについて独自の規定を提示しているため、オーサーシップを決めるために最適な方法は、論文を投稿する際にジャーナルガイドラインを熟知しておくことに他なりません。一般的にな著者指定方法について理解を深めるために、今回は著者指定プロセスにおける3つの疑問に答えながらご紹介していきます。

“研究設計・データ収集・分析における寄与”の意味とは?

ICMJEが提示する基準によると、著者は研究設計・データ収集・分析において相当の寄与が認められなければなりません。ICMJEの定義によるオーサーシップの意義は“論文に実質的な貢献をした寄与者を著者と命名することで、その功労を認めること”にあります。したがって、この定義から推測できることは「知的・創造的な側面で研究に参加することは、単純に実験に参加することよりも大きい比重を占めている」ということです。例えば、実験設計に寄与し研究テーマを決めた一人の大学院生は実験助手(lab technician)、財政後援者、指導教授よりもオーサーシップにおいてはより多くの権利を有していると言えます。

個人ではなく、一つの機関全体が研究にかかわっている=著者である場合はどうでしょう?この場合、たとえ一人の研究員が大部分の作業を進行したとしても、その機関に所属する研究員を含めたすべての構成員がその研究に何らかの寄与をしたことには違いありません。それならば、その機関の誰が代表してオーサーシップを持てばいいのでしょうか?

ICMJEでは、研究に少しでも寄与した研究者ならば、何らかの形で論文内で言及されなければならないと主張されています。一方、機関全体が著者になる場合には、特定の個人を責任者としないことで研究に対する個人の責任の重さを減らすことができる利点があります。しかし読者の立場から見てみると、各セクションにおける責任者が誰なのか判断できなくなってしまいます。

このような問題を解決するために、一部のジャーナルではすべてのグループメンバーおよび彼らの具体的な貢献事項について公開するよう求めています。しかしこの要求は、昨今より複雑化している研究構造や学際的プロジェクト(interdisciplinary project)の増加を考慮すると、困難でもあります。例えば、2010年のある論文ではなんと2,080名が著者として記載されています。この場合一人一人の役割と寄与をすべて記載することはとても現実的ではありません。

どうしても責任者を数名に絞れない場合には、その論文に対する保証人(guarantor)を指定するよう求めるジャーナルもあります。この時保証人は研究全般の信憑性に対して責任を持ち、読者と研究グループの間の連絡担当者(principal liaison)としての役割を担います。

著者にあたらない人物とは?

著者を指定するためのもう一つの方法は、逆に「著者になれないのはどんな場合か」を把握することです。著者に該当しないのは、一般的に以下に当てはまる人物です。

  • “名誉著者(honorary author)”にあたる場合。名誉著者とは、研究と投稿過程に実質的に寄与せずとも慣例的に著者として記載される傾向のある、該当機関高位職(例:学科長)にある人物のことです。このような名誉著者はICMJEが提示する“著者”の一つ目の定義を満たさないため、本来著者として表記してはいけません。それにも関わらず、この慣習はいまだに残っています。
  • “ゲストオーサー(guest author)”を追加した方が掲載確率が上がると考える研究者は多いですが、例えばダブルブラインドピアレビュー形式を取る査読では査読者が著者の名前を知ることはできないため、意味を成しません。
  • “ギフトオーサー(gift author)”にあたる場合。ギフトオーサーは本人の論文出版実績を増やしたいがために記載する場合がほとんどであり、本来著者として表記するのは不適切です。

著者でない人物をどう言及する?

著者の条件にはあてはまらないものの、論文に何らかの関わりを持ち、貢献者として言及したい人物については“謝辞(Acknowledgment)”に記載することができます。謝辞の記載については多くのジャーナルが好意的で、例として実験助手や論文執筆補助者の名前は謝辞にて言及するのが適切だと別途規定しているジャーナルもあります。謝辞は特に、著者数に制限を設けているジャーナルにおいて寄与者を紹介する際に有用です。

謝辞に羅列されたすべての人物については、該当のプロジェクトにおける個人の具体的な寄与度(例:“臨床研究者”, “科学顧問”, “資料収集”, “研究患者提供”)も記載します。謝辞に記載された人物は文書(disclosure form)に署名するか、別途個人名の露出に関して同意しなくてはなりません。また、利害関係の衝突(conflict of interest)についても公開しなければなりません。

今回の記事では“著者”の実際的な意味について解説してみました。次回はオーサーシップにかかわる問題を把握し、それを防止するための方法をご紹介いたします。

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