2023年10月03日

論文がリジェクトされてしまう理由とその対策方法

Wordvice

こんにちは!英文校正ワードバイスです。

論文投稿には、残念ですがリジェクトがつきものです。しかし、「論文の完成度が悪かったから」「今回は縁がなかったから」と片付けてしまう前に、正確にリジェクトの原因を知ることが対処の基本です。

当社ワードバイスでも「論文アクセプトの確率を上げるためのコツ」をいくつか紹介してきました。

論文の内容自体に対する指摘は一概に言うことはできませんが、当社がジャーナル投稿予定の論文の英文校正をする上で、意外に多く見られるのが「序論-方法-結果-結論の構成が守られていない」・「各セクションに書かれている内容がセクションの性格に合っていない」・「参考文献記述の方式がジャーナル指定のフォーマットに合っていない」などという、基礎的なミスです。

このように、基本的なミスによって起こるリジェクトは、絶対に避けたいものです。
そこで、今回もすべての分野の研究論文について言える「受理率向上の方法」を解説していきます。

1. 問題: 論文の基本的な構成に問題がある

IMRD format(Introduction, Methods & Materials, Results, Discussion)は科学分野において最も基本的な論文の構成です。そんなこと分かり切っていると思いがちですが、なんと基本中の基本である論文の構成における不備を問題にリジェクトされている論文が非常に多いのです。医学論文についての2013年の調査では、アフリカ・アジア地域からの論文の70%が基本的な部分でのミスを理由にリジェクトされていると言われています。特にIMRaDの各セクションに記述すべき内容を正確に把握していないために、セクションに合わない内容が挿入されている論文がよく見られます。

解決策: 論文の各セクションの目的と書くべき内容をしっかり把握し、過不足のない内容にすること

先ほどの衝撃的なデータが物語っているような論文の構成におけるエラーは、論文のセクション構成とそこに記述すべき内容はあまりにも基本的な部分であるために、漠然と把握したまま書き始めてしまうことにより起こっていると言えます。今一度論文の基本構造から確認してみましょう。

英語論文の書き方について解説している以下の記事が役立ちます。

また、論文の構造上の問題には、フォーマットに合わない引用形式が用いられていたり、資料の参照元が適切に示されていなかったりする問題も含まれます。特に、自分自身で以前に発表したことのある研究で用いた方法やアイデアを正式な引用という形式を取らずにそのまま使用する「自己盗用・自己剽窃」も研究倫理違反と見なされますので注意しましょう。

(※自己剽窃がどこまで許されるかについては議論があります。分野での慣例や所属機関、投稿ジャーナルの規定を参考にしましょう。)

2. 問題: Introduction(序論)の内容とDiscussion(結論)やその他セクションの内容が噛み合わない

優秀な論文にするためには文章の分かりやすさ、情報と記述の正確さ、論文全体に渡って一貫された論理的フローが必要です。A4数十枚にも及ぶ長い論文を構成する上で、すべての記述が整合性のとれた内容となっているか確認することは非常に重要ですが、テクニックが必要な作業でもあります。

特に論文で問題になるのは論文の頭と尾の部分、つまりIntroductionとDiscussionです。Introductionは読者にとっては論文全体の目的と内容を把握するための、その名の通り「序論」にあたるセクションですが、論文の執筆者にとっては最後に手直しが必要となる部分です。論文の結論と見比べて、論題の提示方法が適切かどうかを再度点検しなければならないからです。

解決策: Introductionは後から書き、第三者から適切なレビューを受ける。

研究から得られたデータや示す結果は不変のものであっても、その解釈や記述に時々刻々と変化が起こるのは自然なことです。このようなアイディアの変化が論文内で適切に扱われていない場合、読者は論旨の展開についていけなくなってしまいます。例えばIntroductionでは研究の意義について壮大なスケールで記述しておいて、結果的にその研究から得られたものがそのような大きな意義まで言及できるほどのものではないと思われる場合、あるいはIntroductionで引用されている先行研究が論文全体としての結果を見たときにさほど関連を持たないと思われる場合など、第三者から見てその論理的流れに疑問符が付くような構成は改めなければなりません。論文全体における論理的整合性を図る方法として、Introductionをなるべく後で書く、あるいは修正を加えるテクニックがあります。そうすることで、読者が結論に納得できるだけの導入を行うことができます。

また、自分の書いた文章に四六時中向き合っていると感覚が麻痺し、第三者が読んだら理解できない論旨の展開にも気づけないことがあります。論文は必ず投稿前に教授や研究仲間からのレビューを受け、「自分ではなく他人が読んだときに分かりやすいか」という点に注意して修正を加えるようにしましょう。当社のような英文校閲会社が、研究論文に対して校閲を加える意義は、そのような「読者の目」を提供する点にもあります。

3. 問題:アブストラクトの内容が、論文を適切に要約できていない

アブストラクトは、単体で読んでも読者が論文の意図や研究の意義、研究が提供する知識について十分に把握できるように作成されなければなりません。アブストラクトは論文の顔として、ジャーナル読者だけでなくジャーナルのエディターに対しても論文の第一印象を形成する上で何よりも重要な役割を果たします。アブストラクトの内容がジャーナルの指定に合っていなかったり論文の意義を十分に表せていない場合、ジャーナル掲載を狙う上でとても不利になってしまいます。

解決策: アブストラクトは必ず最後に作成する

Introductionで何度も強調しているように、論文内容は「書く順序」に思ったよりも多くの影響を受けているということを認識しましょう。論文全体の代表となるアブストラクトは必ず最後に作成します。なかなかない場合かとは思われますが、アブストラクトを最初に書いたきりで完成してしまうと、アブストラクトの記述が論文内の記述と噛み合わないという問題が必ず発生します。アブストラクトは論文で最も重要な部分です。論文内容を適切に反映したものにしなくてはなりません。

アブストラクトの書き方については、以下の記事も見直してみましょう。

4. 問題: タイトルが論文内容に合っていない

論文本体を読むときに、最も重要な効果を持つのがタイトルです。論文を検索する際に、最初に触れる情報はタイトルのみであり、読者が論文を読むか読まないか、興味が引かれるかそうでないかの判断材料として最も重要な役割をします。それだけ重要なタイトルで指摘される問題として、(1) 論文本体の内容を適切に示せていない (2) タイトルが長すぎるなど分野の慣例やジャーナルの規定に従っていない という二つがあげられます。

解決策: タイトルは目に入りやすく、適切な内容となるように注意深く設定する

例として、広告分野でもタイトルとはユーザーにインパクトを与える上で最も重要な部分です。一人でも多くの人々の関心を掻き立て、目に留まり、同時に検索されやすいキャッチーなタイトルでありつつ、消費者が実際に商品に触れたときに「広告に騙された」という気持ちを抱かせないだけの正確性も求められます。論文タイトルにも広告と同じことが言えます。論文内容を誇張することなく適切な内容で読者の目に留まりやすく、更にデータベース検索が主流となった今では適切な読者に届くよう検索効果も考えなければなりません。またここで重要なのが可読性であるため、なるべく余計な表現(例: “a four-year longitudinal study,” “the long-term implications of”)を削り、簡潔にまとめます。

論文タイトルの付け方については、以下の記事で最新のデータと共に紹介しています。

5. 問題: 論文がジャーナルに合っていない

これは最も大きい問題です。ジャーナルに合っていない、と一口に言ってもその中には様々な詳細な理由がありますが、ジャーナル側はリジェクトとした論文の著者に、その理由を詳細に説明することは基本的にしません。リジェクトの原因としては論文がジャーナルのメイン範囲や目的から外れていた可能性、規定を守れていなかった可能性、英語の質が悪かったり、文体がジャーナルの基準に合わなかった可能性など様々ありますが、そのようなミスで論文がリジェクトされてしまうのは最も悔しいことです。

解決策: ジャーナルをよく研究すること

論文がリジェクトされたからといって、自分の研究アイディア自体が誤っていたのだと全否定してしまう前に、見直すべきは「適切なジャーナルを選べていたか」という点です。大学受験の際に志望校の出題傾向に合わせて対策をしたように、論文の受理率を向上させるためにも、まずは「敵を知ること=ターゲットジャーナルの傾向を分析し、適切に対策すること」が重要です。ジャーナル投稿は、時間も費用も必要とする重要なものであるだけに、投稿にあたっては十分な考慮を重ねる必要があります。

投稿ジャーナルを選ぶ上でのコツはこちらの記事で紹介しています。

ジャーナルは必ず執筆者に対するガイドラインをウェブサイトに設置しています。インパクトファクターの高いジャーナルへの論文投稿を研究している研究者によると、ほとんどのジャーナルが投稿規定の厳守を論文に対する最低限の基準として求めており、著者が事前にジャーナルについて十分調査し、不明点はジャーナルに問い合わせるなど積極的に活動すればする分、出版される確率は高まっていると言います。エディターに手間をかけないためにも、ターゲットジャーナルへの投稿規定に関しては十分理解しておきたいものです。

参考文献・記事

1 Ezeala, C., Nweke, I., & Ezeala, M. (2013). “Common Errors in Manuscripts Submitted to Medical Science Journals.” Annals of Medical and Health Sciences Research, 3(3), 376–379. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3793443/.

2 El-Omar, Emad M. (2014) “How to publish a scientific manuscript in a high-impact journal.” Advances in Digestive Medicine, Volume 1, Issue 4, 2014, 105-109, ISSN 2351-9797, https://doi.org/10.1016/j.aidm.2014.07.004.

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